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IT社会の講義

1 高齢者とICT | 健康長寿ネット (tyojyu.or.jp)
現代を生きる人々の生活に欠かせない技術に、インターネットが挙げられます。パソコンやスマートフォンなどの情報端末機器を用いてインターネットを利用することで、様々な情報を得たり、家族や友人、知人と連絡を取り合ったりすることは日常生活において身近になっています。インターネットの利用は高齢者にとっても例外ではなくなってきています。

健康長寿とAI

 近年、テレビや新聞などのメディアにたびたび登場する「AI(人工知能技術)」。AIは近い将来、私たちの生活と深い関係がつくられるであろう、新しい技術です。すでに日本や世界では、AIを取り入れた様々な取り組みやサービスが始まっています。

医療・健康分野でのAI3)

 実用化されるのはまだ少し先の未来ですが、AI技術の応用は、すでに医療・健康分野でも研究が始まっています。そのうちのいくつかをご紹介します。

医用画像診断支援

 画像検査で得られた画像データから、「周りとは少し違う状態の組織」を見つけ出し、医師の診断を支援しようというシステムが研究されています。医師の負担軽減、診断制度の向上などが期待されています。

新薬の開発

 新薬を開発するとき、どの成分がどういった効果が期待できるのかなど、その過程では膨大なデータを扱うことになります。必要なデータを膨大なデータの中から探し出すというAIの仕組みが、人によって行われていた処理を支援し、新薬開発の過程を大きく短縮することが期待されています。

遺伝性の病気の原因を究明

 遺伝性の病気の原因は、遺伝子のどこに問題があるのかを探し出すことが必要です。従来の人による探索では、遺伝子上に複数の要因があっても単一のものしか見つけられず、複合的な要因を解析するのが難しかったといわれています。AIの高速な処理能力や、複雑な計算を瞬時に行う能力が、こうした分野で期待されています。

健康長寿とAI

 健康長寿に向けた考え方として、予防医学があります。病気になってから、動けなくなってからどうするかを考えるのではなく、病気になる原因、加齢により動けなく理由を知り、そうならないように生活を改善するなど「予防」することで、健康長寿を目指そうというものです。2012年に厚生労働省が開始した「スマートライフプロジェクト」はこうした考え方の下、生活習慣の改善、適切な食生活、禁煙を3つの柱としています4)

 また、日本は現在高齢化が進行し、医療費・介護費などの社会保障費が増大しており日本の財政状況が深刻化しています。そこで、実際に支払われた医療費や介護費のデータ、特定健康診査の結果などから、生活習慣病や認知症をAI技術を駆使して予測するという大学と企業の研究が始まっています5)6)

 こうした研究が実用化されるようになれば、私たちの生活そのものとAIには、深い関係ができるでしょう。例えば、近い将来AIが次のように私たちの健康を支援してくれるようになるかもしれません。

 センサー技術が今よりもっと進化すれば、採血せずに血糖値や血中コレステロール値などを測定し、適切な医療機関をAIが探してくれる日がくるかもしれません。私たちが適切なセンサーを身に付けて生活することで、AIが毎日の生活の中でちょっとした変化に気付き、健康を維持できるように助けてくれるということです。

 このようなAIの働きは、予防医学の考え方に則ったものであり、病気の早期発見・早期治療、ひいては健康長寿につながります。AIとともに健康長寿を目指す世界は、すぐそこまで来ているのではないでしょうか。