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脳血管疾患の講義


脳血管疾患とは脳の血管のトラブルによって、脳細胞が壊れる病気の総称です。主な脳血管疾患には脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血があります。脳血管疾患は発症すると命にかかわることもありますが、医療の進歩で死亡者数は減ってきており、厚生労働省の平成27年人口動態統計(確定数)によると、脳血管疾患は日本における死因第4位となっています。しかし、高齢化社会に伴い、患者数自体は年々増えています。

 特に脳の血管の動脈硬化が要因で、脳梗塞の発症は増加を占めており、脳血管疾患の約60%を占めています1)

 脳血管疾患の危険因子は、肥満によるメタボリックシンドローム(内蔵脂肪型肥満)をはじめ、高血圧、糖尿病、脂質異常症など基礎疾患が原因になっています。

 また、動脈硬化は老化現象の1つではありますが、動脈硬化が促進することで脳梗塞などの発症率は高くなります。再発率も高く、1年以内で約10%、5年以内で約30%となっています。

 そのため、脳血管疾患の予防は高血圧や糖尿病などの基礎疾患の治療、食事、運動、喫煙、飲酒など生活習慣の改善を行い、健康管理に気を配ることが大切です。

脳血管疾患予防のための食事
  1. 適正のエネルギーを摂取する
  2. 3食食べる
  3. 腹八分目にする
  4. バランスの良い食事をする
  5. 食塩を摂り過ぎない
  6. アルコールを控える
  7. 野菜や果物を摂取する
  8. こまめな水分補給を行う

1日3食、腹八分目の食事を心がけて動脈硬化予防

 肥満になると内臓脂肪が蓄積されていきます。内臓脂肪からはアディポサイトカインという物質が分泌され、血栓ができやすくなり、動脈硬化を促進させます。内臓脂肪を減らすためには、適度な運動と食事に気を付けます。カロリーを気にしすぎて1日1食や2食にしてしまうと、ドカ食いになってしまいます。さらに食事を抜くと、次の食事で糖や脂肪が過剰に吸収され、太りやすくなるので1日3食を食べることが大切です。

 日本人の食事摂取基準(2020年版)では、エネルギーの摂取量と消費量のバランスの維持を示す指標としてBMIが導入され、目標とするBMIの範囲が定められています。目標とするBMIの範囲内に体重を設定し、エネルギーの摂取量及び消費量のバランスを維持することが大切です。また、65歳以上の高齢者は、フレイルの予防及び生活習慣病の発症予防を考慮した値に定められています。

 目標とするBMIの範囲は表1の通りです。

表1:目標とするBMIの範囲2)
年齢 目標とするBMIの範囲
18~49歳 18.5~24.9
50~64歳 20.0~24.9
65~74歳 21.5~24.9
75歳以上 21.5~24.9

バランスの良い食事とは

 バランスの良い食事とは、日本人の食事摂取基準(2020年版)によると1日の摂取カロリーに対して、炭水化物は、18歳以上50~65%、たんぱく質は、18~49歳13~20%、50~64歳14~20%、65歳以上15~20%、脂質は、18歳以上20~30%が理想的とされています2)

こまめな水分補給が大切

 水分不足は血液の粘りを強め脳梗塞の発症を高めるので、こまめな水分補給は大切です。

脳血管疾患のリスクを上げる食べ物

アルコール

 適量(純アルコール20gの飲酒はHDLコレステロールを増やし、動脈硬化のリスクを軽減すると言われています。しかし多量の飲酒は肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病を発症させるので、週1~2回の休肝日を設け、飲酒量は控えましょう。

 また、くも膜下出血や脳出血は飲酒量に比例して発症率が上昇します。

動物性脂肪(飽和脂肪酸)

 肉の脂身、ラードなど動物性脂肪はLDLコレステロールや中性脂肪を増やします。特に注意が必要なのはマーガリンやショートニングなどトランス脂肪酸を含む油です。これらもLDLコレステロールを増やします。パン、菓子類、加工食品など様々な食品に使われています。

塩蔵品、加工食品、調味料

 食塩の過剰摂取は高血圧を招きます。

甘いもの、過剰の糖質摂取

 糖質の過剰摂取は肥満につながるだけでなく、血液中の余分な糖分により血管が傷つきます。高血糖状態が続くと全身の血管が傷害され、動脈硬化が促進され、血栓ができやすくなります。